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玉砕の島の慰霊碑が泣いている ≪4≫

-この記事は「諸君」2007年8月号から転載しています。執筆者は笹幸恵さん-


「欧米の慰霊の実態」


大戦中に戦地となった太平洋の島々を訪れてみると、米国の慰霊碑が立派なことに驚く。

サイパンでは、繁華街であるガラパン地区に、広大な敷地の米国記念公園があるが、中心部には記念塔が建ち、戦没者の名前を刻んだ御影石で囲まれている。現地の人によれば、そこには米国と共に戦った島民たちの名も合わせて記されているという。

ガダルカナル島では、堺台という首都ホニアラを見下ろせる高台に戦争記念塔が建立されている。白い壁が周囲を取り囲み、入り口には守衛が立っている。許可を得て中に入ると、戦闘経過や戦没者の名前を刻んだ石碑が整然と並んでいる。もちろん落書きもなければ、銘盤を盗まれることもない。

日本の慰霊碑と比較したとき、この差は一体何なのだろう。
戦没者に対して感謝の念と追悼の気持ちを捧げることに、戦勝国も敗戦国もないはずだ。

たとえば、その好例がエジプトのエル・アラメインにある。ガダルカナル戦と同時期の一九四二年夏、連合国と枢軸軍が死闘を繰り広げた北アフリカ戦線の激戦地である。名将モントゴメリー将軍と“砂漠の狐”ことロンメル将軍の名をご記憶の方も多いだろう。

アレキサンドリアから西に約百キロ、地中海を望む海岸線に位置するエル・アラメインとその周辺には連合軍のほか、ドイツ、イタリア、ギリシャなど各国の記念塔や追悼施設が戦争終結直後から建立され、現在にいたるまで手厚い慰霊が行われているという。

町の中心にある「英国および英連邦戦没者の国立墓地」に埋葬・慰霊される戦没者の数は七千九百七十人。
英国の支配下にあった国々からの参戦者もその中には含まれる。教会も擁する広大な敷地には戦没者の名を刻んだ白い石の墓標が放射線状に整然と立ち並び、さらに正面アーチの壁面いっぱいに、隊ごとに戦没者名が刻まれている。

警備担当者によると、入口の純白のアーチは砂埃がひどいので、毎年白く塗り変えているのだという。そうでなくても、灌木以外にほとんど何もない砂漠の真ん中でブーゲンビリアが咲き、草木の手入れを欠かさない。戦後六十年を経てもこうして緑の庭園を維持していることこそ、特筆すべきだろう。

二〇〇六年三月には、前年結婚したばかりのチャールズ皇太子とカミラ夫人が五日間のエジプト滞在中にアラメインを訪れ、国立墓地で黙祷し献花を行っている。

北アフリカ戦線の戦没者の遺骨収集は戦後間もなくから始められ、連合軍の手から、敗戦国となったドイツ・イタリア兵たちの遺骨もそれぞれの国に早い時期に引き渡された。現在のドイツ、イタリアの慰霊塔は町の中心からやや離れた場所にある。閉鎖的な作りながらドイツは重厚な要塞風のレンガ造り、イタリアの慰霊塔は純白の大理石造りの六角形のモニュメントと、お国柄がうかがえるデザインで意匠を凝らしている。慰霊塔の中には、ドイツ軍は約四千名、イタリア軍は約四千八百名の戦没者が埋葬、あるいは慰霊されている。

アラメインでは毎年十月二十三日(連合国側による反攻作戦の開始日)に各国の関係者がエジプト国防省管轄の軍事博物館に集まり式典の後、それぞれの国の慰霊塔で追悼のミサをとり行っている。

こうした諸外国の慰霊の方法や追悼施設の存在は、何らかの示唆を与えてくれるのではないか。

厚生労働省もこれまでに戦没者慰霊碑を海外に建立してはいる。硫黄島を含む東南アジア地域や太平洋の島々に十五基、旧ソ連に建立したソ連抑留中死亡者の小規模慰霊碑が六基。パプアニューギニアには、ウエワク(ニューギニア戦没者の碑)とラバウル(南太平洋戦没者の碑)にあるが、ガダルカナル島にはない。

私が二〇〇五年九月に訪れたとき、ラバウルの慰霊碑は火山灰が降り積もっている状態だった。

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